
「教室には入れないけど、保健室なら通える」 そんなお子さんのサインをどう受け止め、どう支えればいいか。
保健室登校は、学校との繋がりを保ちながら心を休ませる大切なリハビリです。出席扱いや内申点の仕組み、教室復帰への手順を整理しました。
焦らず、お子さんに合った再スタートの形をここから見つけていきましょう。
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教室に入るのが難しい子が、保健室を自分の居場所として学校に通う形を「保健室登校」と呼びます。授業は受けられなくても、まずは学校という場所に足を運ぶことが大きな特徴です。
これは法律で決まった制度ではなく、現場が柔軟に対応している支援の一つ。養護教諭や担任、カウンセラーが連携して、お子さんの心と体の回復をサポートします。
大きな違いは「学校に足が向いているかどうか」という点です。不登校は年間30日以上の欠席を指しますが、保健室登校は「出席」を継続しながら学校との接点を保ちます。
| 項目 | 保健室登校 | 不登校 |
| 登校の有無 | 学校には登校している | 学校を欠席している |
| 居場所 | 主に保健室 | 自宅など学校外 |
| 出席扱い | 原則として出席扱い | 欠席扱い(条件により出席扱いも可) |
| 学校との繋がり | 維持されている | 希薄または断絶している |
保健室登校は、学校という社会の中に居場所を確保し続けられるため、孤立を防ぎやすいというメリットがあります。
どちらも教室以外で過ごす点は同じですが、目的や環境が少し違います。
お子さんの状態に合わせて、まずは保健室で休み、落ち着いたら別室で勉強、それから教室へ……と段階を踏むケースも珍しくありません。
教室に入れない理由や背景は、お子さんによって千差万別です。ただ一つ共通しているのは、どの子も「本当はみんなと同じように過ごしたいのに、体が動かない」という葛藤を抱えている点です。
保健室登校を選ぶ子の多くは、教室に対して強い不安や恐怖を感じています。扉の前で足がすくむ、教室に入ろうとすると動悸や吐き気がするといった症状は、本人の「甘え」ではなく、心身が発しているSOSです。
静かで落ち着いた保健室なら過ごせるというのは、そこがお子さんにとって唯一の「安全地帯」だからに他なりません。
原因は一つとは限らず、いくつかの要因が複雑に絡み合っていることがほとんどです。
| 原因の分類 | 具体的な内容 | 心理的影響 |
| 対人関係の問題 | 友人関係のトラブル、いじめ、孤立感 | 他者への不信感、教室での居場所のなさ |
| 学習面の困難 | 授業についていけない、学習の遅れ、発表への不安 | 自己肯定感の低下、劣等感 |
| 発達特性 | 感覚過敏、コミュニケーションの苦手さ、集団行動の困難 | 疲労感、教室環境への過剰反応 |
| 家庭環境 | 家庭内の不和、生活リズムの乱れ、過度な期待 | 不安定な情緒、自己評価の混乱 |
| 身体症状 | 頭痛、腹痛、倦怠感などの不定愁訴 | 登校への不安の身体化 |
背景として最も多いのが、友人関係の悩みです。直接的な嫌がらせだけでなく「なんとなく避けられている」といった無言の圧力も、子どもの心を深く傷つけます。クラスメイトと同じ空間にいること自体が苦痛な子にとって、保健室は外敵のいない安心できる避難所となります。
「勉強についていけない」「テストが怖い」という焦りも大きな要因です。特に、人前での発表や音読を過度に恐れるケースも少なくありません。周囲と自分を比べて「できない自分」を責めてしまい、教室という場所そのものが自分を否定する場所に感じられてしまうのです。
音、光、においなどに敏感な特性を持つ子にとって、大勢の生徒がガヤガヤと過ごす教室は、想像以上にエネルギーを消耗する環境です。集団生活の中で「普通」を装い続ける疲れが限界を超えたとき、刺激の少ない保健室へ逃れざるを得なくなります。
家庭内での不和や、親からの期待が重荷になっている場合もあります。また、スマホの使いすぎなどで生活リズムが崩れ、朝の体調不良がきっかけで「教室に行きづらくなる」というパターンも珍しくありません。家庭と学校、どちらにも居場所を感じられない時、その中間地点として保健室が選ばれます。
実際には「勉強が苦手で、さらに友達ともうまくいかない」といった具合に、いくつかの悩みが重なっていることがほとんどです。原因を無理に一つに絞る必要はありません。お子さんが自分を守るために、今できる精一杯の選択が「保健室登校」なのだと理解してあげることが大切です。
保健室登校は、教室復帰への大切な助走期間です。ただ「休んでいる」のではなく、学校という社会とのつながりを保ちながら、少しずつ心のエネルギーを貯めていくプロセスと言えます。
大人数の視線や騒音がある教室に比べ、保健室は静かで落ち着ける場所です。専門知識を持つ養護教諭(保健室の先生)がそばにいてくれるため、プレッシャーを感じずに過ごせます。 お子さんにとって「ここなら大丈夫」と思える安全基地があることで、傷ついた心が回復する土台が整います。
不登校が長期化すると、昼夜逆転など生活リズムが崩れがちですが、保健室登校には「登校」という日課があります。
| 項目 | 完全不登校 | 保健室登校 |
| 起床時間 | 不規則になりがち | 規則的に保てる |
| 外出機会 | 減少傾向 | 毎日確保される |
| 人との関わり | 家族のみに限定 | 養護教諭等と対話可能 |
毎日身支度をして家を出るという行動自体が、社会復帰への強い足がかりになります。
いきなり教室に戻るのはハードルが高くても、保健室なら行ける。この「スモールステップ」が重要です。保健室で過ごすことに慣れれば、次は図書室へ、次は放課後だけ教室へ……と、活動範囲を少しずつ広げていけます。 「自分にもできた」という小さな自信の積み重ねが、教室に戻るための勇気を育てます。
養護教諭は、担任の先生とはまた違った距離感で接してくれる存在です。評価や成績を気にせず本音を話せる大人がそばにいることで、お子さんは自分の気持ちを整理しやすくなります。 先生に受け入れてもらえる経験は、人への不信感を取り除き、学校全体への安心感にもつながります。
保健室では、自分のペースでプリント学習や読書ができます。完全に勉強から離れてしまうと「授業の遅れ」が不安になり、それが余計に教室復帰を妨げる原因になります。 たとえ短時間でも学習に触れ続けることで、復帰したときのギャップを最小限に抑えられ、本人も「自分は遅れていない」という安心感を持てます。
家の中にずっといると、他人と関わることが怖くなってしまうものです。保健室登校なら、先生との会話や、時折訪れる生徒たちの気配を感じることができます。 こうした適度な刺激が、対人関係の感覚を鈍らせないための良いリハビリになります。社会から切り離されないことが、心の回復には欠かせない要素です。
保健室登校は心の回復に役立つ一方、知っておくべきリスクや注意点もあります。デメリットを正しく把握しておくことで、先回りした対策やサポートが可能になります。
教室での授業を受けられないため、どうしても学習進度に遅れが出やすくなります。特に英語や数学など、積み重ねが必要な教科は、一度わからなくなると自力で追いつくのが大変です。 保健室の先生は教科指導の専門家ではないため、どうしても自習やプリントが中心になり、「わかったつもり」で進んでしまう点には注意が必要です。
| 学習面の課題 | 具体的な影響 |
| 授業内容の理解不足 | 教室復帰後の授業についていけない |
| 実技科目の未履修 | 体育・音楽・美術などの評価が困難 |
| テスト対策の不足 | 定期試験での得点低下 |
| 学習習慣の喪失 | 集中力や学習意欲の低下 |
保健室が「居心地のよい場所」になりすぎると、教室に戻るきっかけを失ってしまうことがあります。 離れている時間が長くなるほどクラスメイトとの距離も広がり、「自分の席がない」と感じてしまう不安も強まります。学習の遅れに対する焦りも加わって、ますます教室へのハードルが高くなるという悪循環には気をつけたいところです。
保健室では関わる大人が限られるため、同年代の仲間とのコミュニケーションがどうしても減ってしまいます。 特に思春期の子どもにとって、友人とのぶつかり合いや協力といった経験は、社会性を育む大切な機会です。孤立感が深まると、人付き合いに対して消極的になってしまう恐れもあります。
保健室の先生は、本来の救急対応や健康診断などで多忙です。保健室登校の子が増えると一人ひとりに割ける時間が減り、十分なケアが難しくなることもあります。学校全体で連携し、先生一人に負担が集中しない体制づくりが不可欠です。
保健室登校を有意義なものにするために、以下の3点を意識してみましょう。
「保健室にいても出席になるのか」「成績はどうつくのか」という点は、保護者の方にとって最も切実な悩みです。結論から言うと、保健室登校は基本的に「出席」として認められますが、学校種別によって注意すべきポイントが異なります。
基本的に、保健室や校内の別室で過ごした時間は「出席」扱いになります。文部科学省の指針でも認められていますが、大切なのは「学校側がお子さんの状況を把握し、支援している実態があること」です。 まずは担任や養護教諭と話し合い、共通の支援方針を持っておくことが、確実に出席としてカウントしてもらうための第一歩となります。
小学校では出席日数として記録されるのが一般的で、進学への直接的な悪影響はほとんどありません。通知表の所見欄に「保健室で頑張って過ごした」といった前向きな記述がなされることも多いです。 中学受験を考えている場合は、学習の遅れが出ないよう、学校から宿題やプリントをもらうなど、学習進度の管理について先生と連携しておくと安心です。
高校受験が絡む中学校では、内申点が気になるところです。保健室登校は欠席扱いにならないため、出席日数の面では大きなメリットがあります。 ただし、教科の評価は「テストの結果」や「提出物」「授業への意欲」で決まります。以下のポイントを学校と相談しておきましょう。
| 項目 | 保健室登校の扱い | 注意点 |
| 出席日数 | 出席扱い | 学校との事前確認が必要 |
| 定期テスト | 保健室受験が可能な場合あり | 事前申請が必要 |
| 提出物 | 評価対象となる | 提出方法を柔軟に対応してもらえることも |
| 成績評価 | 参加状況により変動 | 個別の学習計画を立てる |
高校は義務教育ではないため、単位認定の基準がぐっと厳しくなります。単に出席しているだけでなく、「各教科の授業時数を満たしているか」が問われるからです。 保健室での自習がその教科の出席時間として認められるかどうかは、学校の判断に委ねられます。留年を避けるためにも、別室登校やICT教材の活用による出席認定など、複数の救済措置がないか早めに確認しておきましょう。
出席を確実なものにするには、保護者と学校の「密なコミュニケーション」が欠かせません。 担任や養護教諭だけでなく、学年主任や管理職も含めて情報を共有してもらうよう働きかけましょう。個別の支援計画を作ってもらうことで、学校全体でのバックアップが受けやすくなります。電話やメール、連絡帳など、無理のない範囲でこまめに様子を伝え合うことが、お子さんの権利を守ることにつながります。
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保健室で過ごす時間は、単なる「避難」ではありません。お子さんが自分のペースを取り戻し、少しずつ外の世界と関わる準備を整える大切な時間です。
一日の過ごし方はお子さんの体調や心の状態に合わせるのが基本ですが、一例として以下のような流れがあります。
| 時間帯 | 活動内容 | ねらい |
| 登校時 | 養護教諭への挨拶、健康観察 | 心身の状態確認と安心感の形成 |
| 午前中 | 自習学習、読書、休息 | 自分のペースで過ごす時間の確保 |
| 昼食時 | 保健室または別室で食事 | 生活リズムの維持 |
| 午後 | 簡単な作業、対話、部分的な授業参加 | 段階的な学校活動への参加 |
まずは「無理に勉強をさせる場所」ではなく、「安心して過ごせる場所」として機能させることが最優先です。
教室で配られたプリントを解いたり、自分のドリルを進めたりします。最近ではタブレットを使ってオンライン授業を受けるケースも増えています。担任や教科の先生が空き時間に様子を見に来て、ワンポイント指導をしてくれるなど、孤立感を出さない工夫もなされています。
心が疲れている時は、何もしない時間も必要です。ベッドで横になったり、好きな本を読んだり。養護教諭(保健室の先生)は付かず離れずの距離で見守り、お子さんの心が落ち着くのを待ちます。
保健室の片付けを手伝ったり、塗り絵や手芸に没頭したりすることも。こうした小さな活動が「自分にも役割がある」という自信や、心の落ち着きにつながります。
一人の先生に負担が集中しないよう、学校全体で支える体制が理想です。
保健室は急病人も来る場所なので、パーテーションで区切りを作るなど、お子さんが落ち着ける工夫が求められます。
ただし、保健室が「ゴール」になってしまわないよう注意も必要です。本人の回復度合いを見ながら、次は相談室へ行ってみるなど、少しずつ「次のステップ」を意識した関わり方が大切になります。
保健室登校から教室へ戻る道は、階段を一歩ずつ登るようなイメージです。焦りは禁物。お子さんの「これならできそう」という感覚を大切に、段階を踏んで慣れていくのが一番の近道です。
まずは「学校に行き、保健室でリラックスして過ごせる」という土台作りから。登校時間が安定し、先生との信頼関係が築けていれば合格です。この時期は無理に教室の話をせず、保健室を完全な「安全地帯」として確立させましょう。
保健室が当たり前になったら、次はごく短い時間だけ教室をのぞいてみます。好きな教科や、仲の良い友達がいる時間など、ハードルの低い場面を選びます。「嫌になったらいつでも保健室に戻っていい」という約束が、お子さんの背中を後押しします。
| 参加しやすい場面 | 参加しにくい場面 |
| 図工・美術、音楽などの実技科目 | テストや発表がある授業 |
| 給食や掃除の時間 | 体育の着替えが必要な時間 |
| 朝や帰りの会の短時間 | グループ活動が中心の時間 |
1時間だけだったのを2時間に、週1回だったのを週2回にと、少しずつボリュームを増やします。大切なのは、お子さんの体調や気分を最優先すること。「今日は無理」という日があっても、責めずに「継続できていること」を認めましょう。
教室で過ごす時間がメインになったら、朝は教室へ。でも、疲れたらいつでも保健室に「避難」できる権利は残しておきます。このエスケープルートがあるからこそ、お子さんは安心して教室という「外の世界」に身を置くことができます。
毎日教室で過ごせるようになっても、そこがゴールではありません。復帰直後は本人が自覚している以上にエネルギーを使っています。保健室は引き続き「いつでも駆け込める場所」としておき、こまめに声をかけるなど、見守りを続けていきましょう。
復帰を目指す過程で、大人が心に留めておきたいポイントです。
お子さんが保健室登校を始めたとき、親としてどう振る舞うべきか悩むのは当然です。焦りから背中を押しすぎたり、逆に突き放したりせず、まずは家庭を「心の充電場所」にすることから始めましょう。
家では、学校での緊張を解きほぐせる環境作りを最優先してください。大切なのは、結果ではなく「プロセス」を認めること。「保健室まで行けたね」「今日も頑張ったね」という一言が、お子さんの自信を支えます。
逆に「いつ教室に戻るの?」「明日はどうする?」といった催促はプレッシャーになります。無理に学校の話を聞き出そうとせず、お子さんが自分から話し出すのを待つ、ゆったりとした姿勢が安心感を生みます。
良かれと思ってしたことが、かえってお子さんを追い詰めてしまうケースもあります。
| 避けるべき対応 | 理由 | 望ましい対応 |
| 「甘えている」と叱責する | 子どもの苦しみを否定し、自己肯定感を傷つける | 「辛かったね」と気持ちを受け止める |
| 過度に心配して学校を休ませる | 登校への意欲を削ぎ、孤立を深める | 保健室でも登校を継続できるよう支える |
| きょうだいと比較する | 劣等感を強め、家庭内での居場所を失わせる | その子なりのペースと努力を認める |
| 学校の話ばかりする | プレッシャーとなり、家でも休めない | 趣味や好きなことの時間も大切にする |
保健室登校を支える土台は、規則正しい生活です。朝は決まった時間に起き、三食しっかり食べる習慣を保ちましょう。特に朝食は、午前中のエネルギー源として重要です。また、休日に散歩をするなど適度に体を動かすことは、ストレス解消や体力維持に役立ちます。
担任、養護教諭、カウンセラーと定期的に情報共有をする体制を整えましょう。 連絡帳や電話、定期的な面談など、負担にならない方法で「家庭での様子」と「学校での様子」をすり合わせます。報告の際は「準備がスムーズになった」など、小さなプラスの変化も共有すると、より前向きな支援に繋がります。
保健室の先生はお子さんの「一番の味方」です。先生から保健室での様子を聞くことで、親だけでは気づけない変化を知ることができます。家庭と学校で一貫した対応ができるよう、信頼関係を築いておきましょう。
必要であれば、スクールカウンセラーや医療機関の力も借りてください。専門家のアドバイスを受けることは、親御さんの不安を和らげることにも繋がります。発達の特性や心の病気が背景にある場合は、小児科や専門医への相談も視野に入れましょう。
保健室登校中のお子さんに意識が向きがちですが、他のきょうだいのケアも忘れずに。一人ひとりと向き合う時間を作り、「みんなを大切に思っている」というメッセージを伝え続けることが、家族全体の安定に繋がります。
お子さんを支える親御さん自身が倒れてしまっては元も子もありません。自分を責めすぎず、時には趣味を楽しんだり、相談窓口や親の会で悩みを吐き出したりしてください。親が余裕を持てない日があっても大丈夫です。心配で眠れない夜があっても、それだけ真剣に向き合っている証です。完璧でなくても、そばにいようとする姿勢そのものが、お子さんにとっての支えになります。
保健室登校は、お子さんが心の元気を取り戻し、学校という社会とつながり続けるための「大切なリハビリ」です。
教室に戻ることを急いでプレッシャーをかけてしまうと、せっかく溜まり始めた心のエネルギーが枯れてしまうかもしれません。保健室で過ごす時間は決して回り道ではなく、次の一歩を踏み出すために必要な「充電期間」なのです。
親御さんは学校と手を取り合い、お子さんの小さな変化を一緒に喜んであげてください。焦らず、長い目で見守るその温かな眼差しこそが、お子さんの自信を蘇らせ、教室復帰への確かな力となります。
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